PTEG
PTEG
PTEG(ピーテグ)とは
経皮経食道胃管挿入術(Percutaneous Trans – Esophageal Gastro – tubing)のことで、比較的簡単に造ることができる、首から食道に向けて管を挿入する手法です。
主に胃瘻の造設(PEG:ペグ)が困難な症例に対して、栄養管理を行う方法として保険診療が認められている処置ですが、腸閉塞などでの減圧(食道、胃、腸の内容物を体外に排出する方法)としても使用することができます。
当院では2019年12月よりPTEGを導入し、手技・その後の管理とも安全に施行しております。
PTEGの目的について
栄養管理
従来の胃瘻造設が困難なため、長期間に渡って鼻からの管(経鼻胃菅)での栄養管理を続けられている症例など、是非一度PTEGをお考え頂ければと思います。
当院では胃瘻造設が困難な症例に対して患者さん・ご家族にPTEGを選択肢として説明させて頂き、経鼻胃菅からの変更後は「楽になった」、「(ご家族からも)表情が豊かになった」など、喜んで頂いております。
鼻やのどにチューブを留置することがないため、痛みや異物感、違和感などの患者さんのストレスを大幅に緩和でき、誤嚥のリスク軽減にも繋がります。挿入後の管理も容易ですので、長期にわたり経腸栄養管理が必要な方に適しています。
胃瘻造設困難例
- 胃-腹壁の間に肝臓、小腸、大腸などが介在する(お腹の手術歴など)
- 胃の切除術後
- 大量の腹水
- がん性腹膜炎
- 極度の肥満
- 腹膜透析
- 胃の腫瘍、急性胃粘膜病変
- 重度の食道裂孔ヘルニア など
腸管減圧
もともとPTEGは緩和医療の領域で、鼻からの管を留置するという患者さんの苦痛を回避しながら腸管の減圧を行える方法として開発されました。
食道がん、胃がん、膵臓がんなどで食道・胃の通過が閉ざされる、がん性腹膜炎などで腸閉塞を起こされた場合など、お薬だけで症状を緩和することが困難な場合があります。吐き気やお腹の不快感、また横になれず不眠の原因になるなど、ときとして大きな苦痛の原因となり得ます。また、胃より上流である食道の閉塞症状(唾を飲み込めない、唾を常に外に吐いているなど)の場合、胃瘻からの減圧では症状の緩和は困難です。
従来の鼻からの管(経鼻胃菅やイレウス菅)で減圧を行う方法は、吐き気やお腹の張り・痛みなどは緩和できますが、鼻からのどにかけて常にチューブを留置された状態となるため、患者さんの負担・苦痛は決して小さくありません。
広島西部地区で唯一の緩和ケア病棟を有する当院では、患者さんの状態・症状・ご希望などを伺いながら、PTEGについて患者さん・ご家族へ正しい情報提供・提案をさせて頂ければと考えています。
チューブから排出される程度の水分、ゆるいお粥や流動食(具なしスープや味噌汁、プリン、ヨーグルト、アイスクリームなど)であれば、少量ずつ口から食べることができます。食べたものはPTEGチューブを通して外へ出ていきます。
PTEGのメリットについて
- 鼻やのどにチューブが存在しないため、患者さんの違和感や痛みなどを回避でき、整容面でも優れています。日常のケア(洗顔や髭剃りなど)もしやすいです。
- 誤嚥のリスクも軽減でき、飲み込みの訓練(嚥下リハビリテーション)もしやすくなります。
- 留置して1週間後からはシャワー浴、2週間後からは湯船への入浴も可能ですし、行動範囲が制限されることはありません。
- 留置の管理が容易なため、在宅での管理も可能です。
PTEGの造設方法について
レントゲンと超音波装置(エコー)を併用して行います。
- 患者さんにレントゲン処置台で仰向けに寝て頂き、落ち着いて治療を受けることができるよう、軽い鎮静薬を注射します。
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鼻からのガイドワイヤーを食道内へ挿入し、レントゲン透視下に胃内(胃全摘後の場合は小腸内)まで送り込みます。このワイヤーに被せるように穿刺用の風船付きカテーテルを挿入します。(図A)
図A.穿刺用の風船付きカテーテルの挿入
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風船を食道内で膨らませ、首からエコーを用いて風船の位置を確認します。局所麻酔の後、動脈、静脈、甲状腺などに当たらないようにエコーを見ながら、風船に針を刺します。(図B)
図B.首からエコーで見ながら風船へ針を刺す
※但し、甲状腺や血管の位置によってはどうしても穿刺ができない場合があります。 -
ガイドワイヤーを針経由で風船の中に挿入し、風船とガイドワイヤーを同時に胃側へ送り込みます。(図C)
その後、風船付きカテーテルのみを送り込んでガイドワイヤーの先端が風船から外れるようにします。
図C.J型ガイドワイヤーの風船内留置
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鼻からの風船付きカテーテルは抜いてしまいます。これで首からガイドワイヤーが食道~胃内に入っているのみの状態となります。(図D)
図D.食道~胃内へのJ型ガイドワイヤー留置
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首から食道内に至る瘻孔(道すじ)を徐々に拡げるため、ガイドワイヤーに沿わせながら筒状の器具(シース)を入れていきます。(図E)
図E.シースを挿入し、瘻孔(道すじ)を確保する
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シース内にチューブを挿入後、シースを外してチューブを固定して終了です。(図F)
図F.経管栄養用のPTEGチューブ/PTEGボタン
最後に
PTEGの一番の問題点は、一般の方のみならず我々医療従事者にもまだまだ認知度が低い点です。
手技やその後の管理も頻雑ではなく、施設や在宅での管理も可能な点は胃瘻と何ら変わりはありません。
PTEGを施行することで経鼻胃菅の苦痛から解放できる患者さん、緩和医療での症状を和らげながら口から食べることや在宅・外出などを叶えたい患者さんなどがおられましたら、是非一度ご検討頂けたらと考えています。
連絡先
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